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ケヤキの梢を見上げながら

『終わらざる夏』 戦争の臭いのしない政府がほしい

終戦記念日、8月15日。
日本が無条件降伏をしたその後に始まった戦争、
中立条約を破棄して、極北の島に上陸してきたソ連軍との戦いを書いた
『終わらざる夏』浅田次郎 (集英社文庫)を読んだ。

単行本で出たときから読みたかったんだけど、1800円×3冊はちょっとキツイな~って買えなかったんだ。本屋さんで文庫本を見つけたので、早速購入したのです!

『終わらざる夏』 戦争の臭いのしない政府がほしい_c0145920_2325533.jpg




終戦間際、「一億玉砕」「本土決戦」が叫ばれる裏で和平への動きがあって、
そのための通訳として、英語のできる人に、赤紙が届いたのだという。
「特業種」といったのだそうだ。
一般の徴兵ではなく、「運転の出来る人」とか、特に業種を決めて徴兵される人がいたらしい。

この物語で招集された片岡直哉は、東京外国語学校卒の翻訳編集者。
45歳。極度の近眼でそれまで招集を免れてきた片岡が、北の果て、
北海道からさらに1200キロも北の占守島(シュムシュトウ)に送られる。

『終わらざる夏』 戦争の臭いのしない政府がほしい_c0145920_23285926.jpg


占守島には、満州から送られた無傷の戦車隊が残っていて、
でも、もう、日本には、戦車や人を移動させる船がなくて、
そのまま、そこで、戦わずして終戦を迎えたのだそうだ。
「近所のおじさん」までが兵隊として駆り出されていた終戦間際にあって
ここには、日本陸軍の精鋭、ほんとの「兵隊さん」がいたんだって。


ソ連のカムチャッカ半島から北海道まで続く千島列島の最北の島。


でも、仮想敵はソ連ではなく、
アリューシャン列島からアメリカがやってくると想定して
英語の通訳、片岡がその占守島に送られたのだそうだ。


片岡が占守島について間もなく、日本は無条件降伏をし、
天皇の玉音放送が流れる。
その後に、攻めてきたのはアメリカではなくソ連で、
悲しいかな、片岡の英語はソ連兵に通じないのだけれど・・・。



物語は重かった・・・。
初めて知ったことがたくさんあった。
最後まで・・・、苦しい、悲しい、お話だった。


でも、それが戦争なんだと、
いま、多くの人に読んでほしいと、思った。



片岡が、8月15日、妻宛に書いた手紙のなかに、こんな文章があって
上中下3巻、読む気になれない人も、これだけは、読んで!
(物語中では旧字体で書かれていましたけれど、勝手ながら新字体に置き換えます)


 いったいこの戦争で何千万の命が喪われたのでしょうか。一夜の空襲で多くの人が死に、一発の新型爆弾でさらに多くの人が死に、一つの県が軍民もろともに玉砕したのですから、犠牲となった人の数はおそらく数百万に上るのでしょう。無論それは日本一国に限った計算で、今次大戦に参加した国、あるいは戦場となった国ではどこも同様の犠牲があったはずなのです。何千万か何億か、正確な数字など永久にわかりますまい。ともかく、夥しい数、とでも表現するほかはないのです。
 その戦争が遂に終わりました。
 これだけの尊い人命が喪われれば、もう二度と戦争は起こりますまい。仮に戦うことが動物の本能であったとしても、万物の霊長たる人類は行為の愚かしさに気づいて、永遠に戦争という悪行に封印をすると僕は確信します。
 明日からはたぶん、世界中の軍隊が兵器の放棄を考えるでしょう。戦争の結果としての平和はかくも虚しく、勝とうが敗けようが喪われた命は帰ってこないのだと悟るでしょう。やがて軍隊そのものが地球上から消滅し、戦争とは無縁の社会からも全暴力が敗訴され、人類は寛容と対話の新しい時代の開幕を迎えるはずです。
 そうならねば嘘です。
 生き残った人々はみな、かけがえのない知人友人をこの戦争で喪い、幾度となく涙したはずなのですから。勝者たる人々がその悲しみを勝利によって忘れられようはずはなく、敗者たる我々もその悲しみを懺悔やら復讐心によって被えようはずはないのですから。
 二度と戦争はせぬこと。人類は必ずそう誓いを立てます。



この文章、私は、忘れない。



安倍政権は、先月、参院選で大勝したとたん、「武器禁輸政策の抜本見直し」なんて話を持ち出しました。
安倍さんという人を、私はまったく信じていませんけど、
安倍政権によって儲けが出る人もいるだろうし、実際、景気が回復しなかったら死ぬしかないと追い詰められている人もいるわけだから、とにかく頑張ってもらうしかないのだけれど、


でも、
忘れないでほしい。
万物の霊長たる人類として、戦争に走らないでほしいと
せつに願います・・・



今日の、天皇陛下の「お言葉」

 本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に68年、国民のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、苦難に満ちた往時をしのぶとき、感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み、戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。




多くの喪われた命に、ご冥福をお祈りします。
Rest in peace!
by ririe_ex | 2013-08-15 23:34 | Books
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すぐ忘れちゃうから、忘れたくないことを、書きとめておこうかと思って… (^^ゞ

by ririe
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